アルバイトの年次有給休暇にまつわるトラブル

ホテルの従業員として5年勤務しましたが、正社員からのアルバイト従業員への度重なるパワハラにうんざりしてしまい、辞める決心をしました。

決め手となったのは、特定の従業員に対する過剰なミスの指摘です。勤務し始めて間もない新人に対して執拗にあげつらった挙句、他の従業員の前で何時間も怒鳴り散らす様子は見ていて気持ちの良いものではありません。 それでも飽き足らなかったのか、ミスを責めるだけでなく、当人を貶めるようなあからさまな悪口を張り紙にしていたことには驚かされました。一度や二度ではなく、日常的に行われている行為でしたので、退社する者が後を絶たず、今になって思い起こしてみると、いわゆる「ブラック会社」だったのかもしれません。

5年務めている間に初代社長が辞任し、新社長が就任すると同時に社名も変わり、数人の古参社員が幅を利かせるようになってからというもの、職場の雰囲気が徐々に悪化していったように思います。規模の小さな会社でしたから、一部の社員が強い権限を持つようになったのでしょう。アルバイトとはいえ、せっかく採用されたのだからと辛抱し続けてきましたが、さすがに限界に達しました。

アルバイト従業員同士の関係は比較的良好でしたし、なんだかんだ言って5年在籍した会社ですから思い入れもあります。せめて辞めるときくらいはスッキリした形で去りたかったのですが、まさか自分の言いだしたことが大きなトラブルに発展しようとは思いもよりませんでした。 就業規則では「辞める場合は1ヵ月前に申告すること」と明記されていましたので、多めに見積もって約2ヵ月前に直属の上司に相談に行きました。

ついでと言ってはなんですが、それまで一度も使っていなかった有給休暇を消化しようと申請したところ、「アルバイトで有給を使ったことのある人は一人もいない」と遠回しに却下されたところから話がこじれていきます。 ダメだと言われたわけではないので、「検討してください」と一旦は引き下がりましたが、後日改めて話をすると言われていたのに、いつまで経ってもその気配はありません。

有給については、正社員でなければ使うことができないと思っている方も多いようですが、アルバイトでも半年勤務すれば最初の有給が発生します。一般的な会社で、10日前後が目安です。さらに、その後は1年ごとに更新があり、取得できる有給の日数は少しずつ増えていくことになります。それと同時に、発生して2年が経過しても使わないままにしておくと、最初の有給は消滅します。つまり、1回更新されるごとに前々年分が消滅する代わりに、もとの有給に勤続年数に応じた日数を上乗せする形で新たな有給が発生するという仕組みです。私の場合5年在籍していましたから、最初の半年と2年目、3年目の有給はすでに消滅していましたが、4年目、5年目の有給34日分が残っていたことになります。

退職前に取得できるすべての有給を消化するには、勤務日を少なくとも34日確保しなければなりません。なぜならば、退社日を過ぎてしまうと有給を取ることができなくなるからです。ですから、ずるずると返事をもらえないまま退職の日を迎えてしまえば、労働基準法の適用範囲を超えてしまい、私には1日の有給も与えられなくなります。万が一そうなってしまうと、泣き寝入りすることにもなりかねません。

アルバイトは正社員と比べて各種保障のない立場にありますから、いざというときには自分で自分の身を守る必要があります。 そのためには、最低限自分の勤務実態を証明できる書類を手元に残しておくことが大切です。出来ることなら、月々の給料の締日までにタイムカードのコピーを取っておき、給料明細書はすべて保管しておくことをおすすめします。 このときは、タイムカードの記録に関しては、あいにく辞めると決めてから2ヵ月分しかコピーしていなかったので、多少慌てることになったことも事実です。

困ったことに、会社側は有給を認めないだけでなく、あろうことか対抗措置を取ってきました。 社長が変わる以前の私の給料については、当然ながら前の会社から支払われています。ところが、新社長の言い分によると、そのときの給料も自分たちが払ったものであって、有給を取りたいのなら、前の会社名義で渡された給料を払い戻す義務があると主張してきたのです。理屈が通りませんし、どう考えても言いがかりです。

もちろん、経営者が前社長であろうが新社長であろうが、私が働いていたことに変わりはないのですから、もらうべくしてもらった給料であって、2年も前にいただいたものをいまさら返せと言われても無理ですし、そのような義務はありません。 このまま放っておくと出勤日が少なくなるばかりで有給をもらえない可能性がありましたので、労働局に相談に行くことにしました。

会社側は裁判になる可能性も示唆してきましたので、内容証明郵便を利用したり、労働局の職員にアドバイスをいただいたりしてなんとか有給を取得し、言いがかりからも逃れることができましたが、トラブルに巻き込まれた1ヵ月は精神的に辛かったです。 会社側を納得させる決定的な切り札となったものは、初勤務の月から一枚も欠けることなくファイリングしていた給料明細書です。以前のアルバイト先で同じような目に遭っていた従業員がいましたので、何かあったときの証拠として、これだけはきちんと保管しておこうと決めていました。

会社とトラブルを起こしたアルバイト従業員は、基本的に一人で戦わなければなりません。 労働局の職員や身内のアドバイスに救われたところが大いにあるにせよ、想像以上に精神的に追い詰められるものですし、個人で出来ることにも限界があります。 もし、給料明細書を保管していなかったらと思うと今でもぞっとします。 アルバイトで有給休暇を取得する意志のある方は、タイムカードのコピーが難しいのなら、せめて給料明細書は全部保管しておいた方がいいでしょう。 正社員にしろ、アルバイトにしろ、会社との雇用関係は契約がすべてで、書類がものを言うことは間違いありません。むしろ、アルバイトの方が書類の重要性を感じます。会社関係の書類は、もらったらその場限りで捨ててしまうのではなく、一つ残らず残しておくようにしましょう。